☆8月19(日) 丹波川本谷遡行

聡は愛ちゃんのところに行っていない。滋はまだ寝ていたが、声を掛けずに出発した。8時にげんさんの家の前で待ち合わせである。今日は二人に引っ張られて丹波川本谷を遡行するのである。緊張していた。まずは基礎体力の無さと、そのために二人の足を引っ張るのではないかという不安だった。

げんさんの家の前に着くとにん2さんが車でやって来た。MSCCのメンバーであるしんちゃんが参加するので八王子駅まで迎えに行くという。予定ではげんさんのデリカで現地に向かう予定だったが、しんちゃんを迎えに行くついでにそのままにん2さんの車で行こうということになった。

沢は面白かった。いくつかの淵で泳ぎ、ガシガシと沢を登っていくというのは、なんとも本能を刺激する行動である。

      

途中のゴルジュで岩をへつり、あと一歩というところで足を滑らしズルズルッと滑り水の中に落ちた。ゴルジュを流されていく途中でげんさんが僕をムンズと掴んでくれて、岩に上がることができた。2mほどの高さで、わずか1秒にも満たない時間なのだが、『あ〜!あと一歩だったのにぃ』『う〜!また下までながされるのかぁ』『どこかぶつけたかなぁ』と言葉に費やすと長くなってしまうことを、一瞬のうちに考えた。”頭が白くなる”というのを期せずして経験した(笑)。

途中何度かにん2さんとげんさんのロープに助けられ、おいらん淵の手前の最後の滝に着いた。6mくらいの滝だろうか。沢を歩いたことがなく高さの感覚がいまいちで、正確な高さが分からないが、とにかく大きな滝だなぁという感じだった。まずはにん2さんがロープを肩に掛けて淵から滝の左側に取り付き若干のシャワークライムっぽく登っていく。淵のこちら側でみていると、実にさりげなく登っていくので『な〜るほど、あのあたりは足がかけやすいのか』と思ったが、実際に自分が取り付きまで行ってみて、『な〜んで、ここ登って行けたんだ?』という場所だった。ロープで確保して貰い全体重を引っ張ってもらい淵から上がり、岩に足をかけた。あとは一歩一歩足場を探し、手を掛ける場所を探しながら登っていく。

滝は中心に寄るほどコケが生えていて、よく滑る。なんとか手がかりになるような岩を探し、一歩・・・、一歩・・・と登る。断続的に流れる滝の水だが、一瞬流れが薄くなった瞬間に足をかけられそうな場所が見つかる。『め〜けっ!』という気分である。確保して貰っているとはいえ、緊張の連続だった。

最後の一歩で滝上まで上がること出来た。そしてそこは今回の遡行終了地点のおいらん淵だった。ふ〜!やったぁ!と思わずバンザイををしてしまった。

なんとも言えない達成感があった。

難しい場所にかかると、二人のベテランが言葉を交わすこともなく、それぞれがそれぞれに役割分担で確保したり後ろに回ったり、さり気なく行動しているのが実に印象的だった。レベルは全く違うが、僕らが仲間内でキャンプに行ったとき、それぞれ自分の役割を言葉を交わすことなくやっているのに少し似てるなぁ、と不遜にも思ってしまった。

なんにしても、実に実に楽しい沢だった。これはクセになる。